犯罪の加害者として逮捕された人が,被疑者の段階でマスコミにより実名報道されてしまうケースは多く見られます。実名報道の例外としては,少年が起こした事件などが挙げられます。一方で,加害者(被疑者)ではなく被害者の実名や写真が新聞や雑誌,テレビ等で報道されることもよくあります。
このことについて不思議に思ったことはありませんか。なぜ犯罪加害者だけでなく被害者の名前が公開されるのでしょうか。プライバシーの観点から問題はないのでしょうか。この件に関して以下の問いに答えなさい。
(1) まず,なぜ犯罪の加害者の名前が公開されるのかを考えてみましょう。ここでは被疑者の段階で公表することの是非は考えず,有罪が確定した後の報道について検討することにします。
加害者の氏名が公開されることのメリットとデメリットを述べた上で,なぜ公開することが正当化され得るのかを説明しなさい。ただし講義で扱った経済学的なアプローチを用いること。
(2) 次に犯罪被害者の実名報道について考えましょう。なぜ被害者の名前をマスコミに公開することが必要なのでしょうか。
ここで被害者の名前をマスコミに提供するか否かを警察が事件毎に判断するルールと比較して,被害者の名前を警察がマスコミには常に提供した上で,マスコミが公開するか否かを自主的に判断する(または被害者の同意がなければ一般には公開しない)というルールにはどのようなメリットとデメリットがあるでしょうか。様々な関係者の利害とインセンティブについて多面的に検討すること。
ただしここでは,警察がマスコミに公開することとマスコミが世間に公開することとを区別していることに注意してください。