2011年1月10日月曜日

新年のごあいさつ

【以下はTwitter上で連投したもののコピーです】

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。さて昨年12月27日に神戸労働法研究会に参加しました。大内伸哉先生のblogに,当日の内容がまとめられているので紹介します。
http://souchi.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-5c3e.html

神戸では,まず石田信平さんによる報告を聞きました。仕事の位置づけとして,単に生活の糧を得るための手段と考えるのか,それとも社会参画や自己実現に欠かせないものであるため「公正」であることが求められるのかといった点からの議論が主に展開されました。

しかし私は,社会参画や自己実現を安易に仕事に結びつけることに問題があるように思います。おそらく現状では,一定以上の資産がある場合などを除けば,働かなければ生活できないからこそ仕事に社会参画や自己実現がリンクされる傾向があるのではないでしょうか。

最近,石油に似た油を効率的に生み出せる藻が発見されたそうです。仮に我が国がこの技術により非常に豊かになって,国民一人当たり毎月100万円のベーシックインカムが払えるようになったとしましょう。この場合でも仕事は自己実現のために必要と言えるのでしょうか。

さて,私は退職後の競業避止義務についての理論分析を報告しました。その際に,主張の骨子と強調したいトレードオフの関係などを先に理論モデルなしで説明しました。その上でなぜ経済学者は,このような主張をわざわざ理論モデルを使って表現するのかについても解説しました。

なぜ言葉でも説明可能なトレードオフの関係や政策的含意などを数式やモデルを用いて表現するのでしょうか。それは日常言語で詳細な場合分けや論理的帰結の検討をするのが難しいからです。

数学を使うから難しいというのは誤解で,(日常言語で考察するのが)難しいから数学を使うのです。その意味では,日常言語により詳細な検討を行っている法学者を私は尊敬しています。法学者もいろいろなので,全員を尊敬しているわけではありませんが(笑)

多くの労働法学者は,「経済学者は,もっと実際の法律や制度,そして紛争の実態を知るべきだ」と考えているのではないでしょうか。一方で経済学者は,「労働法学者は,規制の波及効果や,紛争にはならない通常の企業行動をもっと知るべきだ」と考えているように思います。

私の報告に対しても,実際の紛争や法制度に関する様々なコメントを頂きました。今後,法学と経済学の相互理解が進めば学問として楽しいだけでなく,真に労働者のためになる制度設計についてのより有益な議論できるようになるはずです。というわけで,また法学者の研究会に参加したいと思います。

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