2011年6月2日木曜日

分譲マンションの議決権について

1,はじめに

私は賃貸マンションに住んでいますが,最近,周囲で家を買う人が増えてきたようです。そこで少し気になって,新聞に折り込まれているチラシなどを見るようになりました。まあ私には家を買うお金はまだないのですが(笑)

さて,いろいろ調べているうちに気になったのが分譲マンションの議決権の決まり方です。

マンションの区分所有者が持つ議決権については,区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S37/S37HO069.htmlの第三十八条により,規約に別に定めない限りは,専有部分の床面積の割合に応じて設定されています。そして実際に多くの物件ではこの通りに,面積に比例して議決権が設定されているようですが,これが本当に居住者の望むところなのかについて疑問を持ちました。

少し考えてみると,面積比例の議決権というのは平等でもなく効率的でもないように感じます。まずはいくつかの例を考えてみましょう。

例えば,1フロアに一戸しかない,また完全に同じ間取りの5階建てのマンションがあったとしましょう。販売価格は,上層階に行くほど高いのが普通ですね。上の階の方が眺望が良いなどの利益がありますから。しかし現行のルールでは,販売価格や物件の価値は違っても,このマンションの5戸は面積が同じなので議決権は均等です。

別の例を考えてみます。ある大規模マンションの低層階にある100m^2の部屋と高層階にある80m^2の部屋があったとします。ここで仮に当初の販売価格で比べたら,高層階の部屋の方が高かったとしましょう。しかし高層階の部屋は,買値が高かったのにも関わらず,低層階の100m^2の部屋よりも議決権が少ないのです。

これと同様に,同じフロアにある100m^2の北向きの部屋よりも80m^2の南向きの方が購入価格は高いのに,議決権が少ないこともあり得ますね。

これらの例を見ると,何かおかしいように感じませんか。極端な例を考えると,問題点がより明確になります。例えば,同じマンションの部屋に対して同じ5000万円を出資したのに,高層階の80m^2の部屋を所有する人の方が低層階の100m^2を所有する人よりも議決権が少ないのです。これは不公平ではないでしょうか。

2,対案

そもそもマンションとは何でしょうか。これを価値の異なる物件を持ち寄って財産を形成している共有の不動産と考えるなら,資産価値に応じた議決権になるのが自然ではないかと思うのです。そこで検討したいのは,面積比例ではなく資産価値比例で議決権を設定するという考え方です。

それでは議決権を資産価値比例にするとはどのようなことでしょうか。マンションの資産価値は,時間を通じて変わってしまいますが,ここでは分譲時に設定した当初の価格の比で議決権を設定するケースを考えます。例えば最初に例として挙げた,完全に同じ間取りの5階建てのマンションを考えたとして,当初の価格が5階は4000万円,4階が3900万円,3階が3800万円といったように100万円ずつの差があったとしましょう。もちろん交渉により値引き販売や,売れ残り物件の値下げ等もあるかもしれませんが,ここではこれらの当初販売価格に比例した形で議決権を設定することを考えます。

3,何が変わるのか?

現状のように面積比例で議決権を設定する場合は,単位面積当たりの価値が低い部屋(例えば低層階や北向き等)に対して過大な議決権が設定されているのに対して,価値が高い部屋(例えば高層階や南向き等)の所有者に対しては,本来の価値と比べると議決権が過少になっているように思われます。

これに対してマンションの議決権を,これまでの面積比例から価値比例に変更すると何が起こるでしょうか。まず,これまで購入金額の割に権利が少なかった高層階の高額物件の価値がおそらく上昇するでしょう。もちろんそれに伴い価格も上昇するでしょうが,物件購入者にとっては資産価値に応じた権利を得られることになります。一方でこれまで過剰な権利が与えられていた低層階物件については,議決権は減りますが,物件の価格も下がるでしょう。このほうが購入者にとって幸せなことではないでしょうか。

4,おわりに

そもそも民法の第二百五十二条では「共有物の管理に関する事項は,前条の場合を除き,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。ただし,保存行為は,各共有者がすることができる」とされています。マンションは区分所有者の共有物であり,この法律の考え方を素直に適用すれば価格比例の方が自然だと考えます。

マンションの議決権については,面積で議決権が決まるということがこれまで当然だったために誰も疑問に思わなかったのかもしれません。または,疑問に思っていたとしても,面積比例が常識だから争ってもしょうがないと考えて主張しなかっただけかもしれません。

しかし,これまで不満がなかったのかについては調査する必要があるように思います。高層階の部屋を購入する人は,議決権が少ないことに対しいて,また低層階を購入する人は望むよりも多い議決権が設定されているために価格が高止まりしていることに対して,もしかしたら不満に思っていたのではないでしょうか。

もちろん当初分譲価格比例で議決権を設定するよりも,これまで通りの単純面積比例の方が明確で望ましいという考え方もあるでしょうし,また別の権利配分ルールの方が望ましいという意見もあるかもしれません。

議決権の設定は,どのようにするのが望ましいのでしょうか?もし良い案があれば是非ご教授ください。よろしくお願いします。

2 件のコメント:

  1. http://ifs.nog.cc/tk4982.hp.infoseek.co.jp/kubun-M-p02.htm#kubun1401

    マンションの場合は出資額だとどうもあいまいだなので、面積でということになったようです
    (それに価格ベースだとAは500万の部屋を100万で買い、Bはそのままの値段で買ったケースの場合、もめる可能性があります)
    また、日本の場合は価格が面積に比例する傾向があるので、たいていの場合は面積で決めても大きな問題にはならないように思えます
    (そもそも、議決の際には議決権と人数をからめることのほうがおおいので、どういう形にしても高額出資者の不満は残ると思います)

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  2. 匿名さん

    コメントありがとうございます。

    まず出資額そのものにするのは実際問題として難しいので,当初設定された価格を物件の価値を代理する指標として使ってはどうかということを考えていました。

    確かにこれでは不正確です。500万円に設定した部屋に複数の希望者がいて抽選になったとすると,本来の価値は500万円よりも高かったことになりますし,売れ残りで値下げ販売する場合は,本来の価値は500万円よりも低かったことになります。

    しかし面積比例にするというある意味で割り切った方法と当初価格比例にするという割り切り方のどちらが優れているのかを検討してみてはどうかというのが関心事です。

    また「日本の場合は価格が面積に比例する傾向がある」のは確かですが,それは高層階に広い部屋が多いからであって,1m^2あたりの価格で比較したときに上層階や南向きの方が高いのではないかと考えました。

    昔のように高くても4階建てくらいでエレベータがない物件の場合には,上の階の方が見晴らしは良いが階段の上り下りが面倒だなどという理由で,どのフロアの価値もおよそ同じであると考えて,その下で物件価値は面積に単純に比例すると考えられたのかもしれません。それが時代の変化や高層マンションの出現などで成立しにくくなったのではないかなどとも考えています。

    いずれにせよもう少し考えてみます。ありがとうございました。

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