2011年8月4日木曜日

問題29

生産者が独占の市場について以下の問に答えなさい。

(1) 完全競争市場における市場取引について図を用いて考える場合には需要曲線と供給曲線を描くのに対して,独占企業がどのような価格設定を行うのかを考える場合には需要曲線と限界費用曲線を使います。なぜ独占の場合には供給曲線を用いないのかを説明しなさい。その際に供給曲線とは何かについても述べること。

(2) 独占が社会的に見てなぜ問題なのかを効率性の観点から説明しなさい。

問題28

Aさんが働く会社は都心にオフィスがあります。そしてこの会社で働く従業員の中には,オフィスの近くに住んでいる人もいますが遠くから通勤している人もいます。

さて,この会社では,固定給と成果給に加えて,住宅手当と通勤手当が支給されることになっています。そして住宅手当は,世帯主か否か,また賃貸か持家か等に関係なく毎月3万円が一律に支給されるのに対して,通勤手当は実費が支給されることになっています(ただし一月あたり10万円を上限とします)。

このような住宅手当と通勤手当のルールが実施されているとき,人々の居住地選択の判断がどのように行われるのかに注目して,このルールの問題点を効率性の観点から指摘しなさい。また対案として,どのようなルールへ変更することが望ましいのかについても述べなさい。

問題27

ある市場の需要と供給の関係が描かれた下の図を用いて,生産者に対して以下のような補助金があった場合に発生する死荷重は図のどの部分になるのかを示しなさい。ただしb>1000とします。なおグラフの切片の値なども明記すること。



(1) 1000円の従量補助金(つまり取引量一単位当たり1000円を政府が生産者に対して支払います)

(2) 20%の従価補助金(つまり市場取引価格の20%相当額を政府が生産者に対して支払います)

問題26

ある国のある地域で,バス会社が赤字路線からの撤退を考えているとしましょう。そして,このことを知った住民たちが反対運動を始めました。また自治体の議会においても一部の議員たちが「住民にとって欠かせない交通手段が失われるのは困る」と考えて,今回の件も含めて,今後はこの地域から企業が撤退する場合には自治体の同意を必要とする(ただし倒産した場合にはこの限りではない)旨の条例の制定を検討しているとしましょう。

ここで問題です。このような規制が実施されると長期的に何が起こるでしょうか。仮にあなたがこの議会の議員の一人であったとして,規制に反対の立場から「なぜ望ましくないのか」を他の議員に対して説明することを考えて,その理由を述べなさい。

問題25

ある商品の市場を考えます。この商品は売り手と買い手が一カ所に集まって取引をしています。そしてこの市場は,市場までの移動に交通費がかかる点を除けば完全競争市場の条件が満たされているとしましょう。

話を簡単にするために,まず個々の売り手はこの商品を一人当たり一つまでしか作れない,また個々の買い手も,この商品を買うとしても一つまでとします。そして交通費を考えない場合の需要曲線と供給曲線は次の図のように価格がゼロ以上10000円以下の範囲では直線で表されているとしましょう(需要関数と供給関数はそれぞれq=10000-pとq=pです)。また,家から市場までの往復の交通費は売り手も買い手も全員1000円であるとします。


以下の問に答えなさい。


(1) 交通費を考慮すると,上の図の需要曲線と供給曲線,また市場均衡点はどのように変化するでしょうか。図示しなさい。

(2) このように交通費がかかることにより,この市場の消費者が受け取る余剰は交通費がかからない場合と比較してどの程度減少するでしょうか。数値で答えなさい。



問題24

以下の問に答えなさい。

(1) 安藤さんが所有しているマンションを井上さんが3000万円で購入することになったとしましょう。もちろんお互いに合意の上で契約しました。このとき取引の成立により誰がどのような余剰を得ているのかについて説明しなさい。


(2) 内田さんと江頭さんが,各自が購入して読み終わった本を双方の合意の上で物々交換することにしました。この場合には誰がどのような余剰を得ていますか。説明しなさい。

2011年7月27日水曜日

「労働・雇用」を考える六冊

日経ビジネスアソシエ5/3・5/17合併号「今こそ読むべき本」に寄稿した原稿のオリジナル版を転載します。締め切り直前になって,かなり字数制限が厳しくなったので,雑誌掲載版だけを読んだ方は何が言いたいのかが良く分からなかったかもしれませんが,元々はこのような内容でした。

なおこのオリジナル版はメールマガジンαシノドスvol.76 2011/5/15にも「震災以降の<労働・雇用>を読み解く6冊」として掲載して頂きました。

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【必読書3冊200字ずつ】

1, 小島寛之『数学的思考の技術』ベスト新書
人間の様々な行動や選択について、また社会制度について論理的に考えるための良い手助けとなる新書です。例えば、なぜ多くの労働者の賃金が固定給と歩合給・成果給の組み合わせになっているのか、またなぜ年金制度が積立方式ではなく賦課方式になっているのか等の様々な論点について分かりやすく説明しています。第1部と第2部は、家族や友人に自分の言葉で説明できる水準まで理解したことを確認しながら読み進めると良いでしょう。

2, 大竹文雄『競争と公平感』中公新書
私たちは働いて得た賃金で必要な生活用品を購入し、お気に入りのレストランで食事をします。その際に、皆に選ばれなかった店は倒産してしまうかもしれません。このように市場競争には、選択の自由から生まれる消費者のメリットがあるのと同時に、生産者を厳しい競争にさらすことになります。本書は、市場競争のメリットを伝統的な経済学に従って解説するだけでなく、人の弱さや判断ミスをする傾向などにも配慮した形で、市場と政府の役割分担がどうあるべきかを明快に解き明かしています。

3, 大内伸哉『雇用社会の25の疑問 労働法最入門[第2版]』弘文堂
本書は、「女性社員は、夜にキャバクラでアルバイトをしてよいか」や「会社は、美人だけを採用してはダメなのであろうか」といった刺激的なタイトルが付けられた28の話を題材にして、雇用に関するわが国の法的なルールを分かりやすく説明する異色の教科書です。関心がある部分から読み進めると良いでしょう。労働法の基礎的な考え方を知ることは、労働者として自分の身を守るために有益なだけでなく、出世や独立により経営者サイドに立ったときにも役立ちます。

【一押し3冊150字ずつ】

1, 小峰隆夫『人口負荷社会』日経プレミアシリーズ
まず国立社会保障・人口問題研究所のホームページにある「人口ピラミッドの推移」を印刷しましょう。そして人口構成が今後どのように変化するのか、また自分がどの位置にいるのかを確認してから、本書を読み始めましょう。労働市場の需給変化と、それに伴い社会制度がどのように変化するのか、またしないのかを理解することは、私たちが今後のキャリアを考える際に必要不可欠です。

2, 金井壽宏『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP新書
今後のキャリアをどうするつもりかと上司から聞かれても、「将来のことは実際のところ良く分からない」と感じる人も多いかもしれません。そのようなときに役立つのが本書です。ある程度は流れに身を任せつつ、昇進や転職などの人生の節目では将来の方向性についてしっかりと考えるという、具体的かつ誰でも実行可能な方法論が提示されています。

3, ジョン・マクミラン(訳:伊藤秀史・林田修)『経営戦略のゲーム理論』有斐閣
本書は副題に「交渉・契約・入札の戦略分析」とあるように、ゲーム理論や契約理論の知見が、実際の経済活動にどのように活用できるのかを解説するものです。互いに相手の行動を予測して意思決定を行う環境における最善の戦略について知ることは、ビジネスだけでなく、個人間や国家間の契約や交渉等を理解する際にも役立つでしょう。

【選書理由400字】
今回の震災と津波被害により、多くの方が亡くなられました。また家や仕事を失った人も多く、少なくとも当分の間は、これまでと同じ仕事を続けることが難しい場合もあるでしょう。
このように予想しない形でキャリア転換を迫られるのは災害時だけに限りません。企業の倒産や特定分野からの撤退など様々な状況が考えられます。そこで今回は雇用とキャリア形成を考える際に役立つ6冊を選びました。
まず働くすべての人に求められるのが、人々の行動や市場経済の仕組みについて、また雇用にまつわる基本的なルールについて知っておくことです。加えて現時点で何が起こっているのかだけでなく、今後何が起こるのかを知ることが出来れば有益ですね。もちろん将来を予想するのは難しいことですが、今後の人口分布がどのように変化するのか、それに伴い労働の需給がどのように変わるのかなどは、かなり確実に予測できるのです。
いま自分にできることを確認し、その上でこれから必要なスキルとは何かを考えるきっかけになれば幸いです。