なおこのオリジナル版はメールマガジンαシノドスvol.76 2011/5/15にも「震災以降の<労働・雇用>を読み解く6冊」として掲載して頂きました。
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【必読書3冊200字ずつ】
1, 小島寛之『数学的思考の技術』ベスト新書
人間の様々な行動や選択について、また社会制度について論理的に考えるための良い手助けとなる新書です。例えば、なぜ多くの労働者の賃金が固定給と歩合給・成果給の組み合わせになっているのか、またなぜ年金制度が積立方式ではなく賦課方式になっているのか等の様々な論点について分かりやすく説明しています。第1部と第2部は、家族や友人に自分の言葉で説明できる水準まで理解したことを確認しながら読み進めると良いでしょう。
2, 大竹文雄『競争と公平感』中公新書
私たちは働いて得た賃金で必要な生活用品を購入し、お気に入りのレストランで食事をします。その際に、皆に選ばれなかった店は倒産してしまうかもしれません。このように市場競争には、選択の自由から生まれる消費者のメリットがあるのと同時に、生産者を厳しい競争にさらすことになります。本書は、市場競争のメリットを伝統的な経済学に従って解説するだけでなく、人の弱さや判断ミスをする傾向などにも配慮した形で、市場と政府の役割分担がどうあるべきかを明快に解き明かしています。
3, 大内伸哉『雇用社会の25の疑問 労働法最入門[第2版]』弘文堂
本書は、「女性社員は、夜にキャバクラでアルバイトをしてよいか」や「会社は、美人だけを採用してはダメなのであろうか」といった刺激的なタイトルが付けられた28の話を題材にして、雇用に関するわが国の法的なルールを分かりやすく説明する異色の教科書です。関心がある部分から読み進めると良いでしょう。労働法の基礎的な考え方を知ることは、労働者として自分の身を守るために有益なだけでなく、出世や独立により経営者サイドに立ったときにも役立ちます。
【一押し3冊150字ずつ】
1, 小峰隆夫『人口負荷社会』日経プレミアシリーズ
まず国立社会保障・人口問題研究所のホームページにある「人口ピラミッドの推移」を印刷しましょう。そして人口構成が今後どのように変化するのか、また自分がどの位置にいるのかを確認してから、本書を読み始めましょう。労働市場の需給変化と、それに伴い社会制度がどのように変化するのか、またしないのかを理解することは、私たちが今後のキャリアを考える際に必要不可欠です。
2, 金井壽宏『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP新書
今後のキャリアをどうするつもりかと上司から聞かれても、「将来のことは実際のところ良く分からない」と感じる人も多いかもしれません。そのようなときに役立つのが本書です。ある程度は流れに身を任せつつ、昇進や転職などの人生の節目では将来の方向性についてしっかりと考えるという、具体的かつ誰でも実行可能な方法論が提示されています。
3, ジョン・マクミラン(訳:伊藤秀史・林田修)『経営戦略のゲーム理論』有斐閣
本書は副題に「交渉・契約・入札の戦略分析」とあるように、ゲーム理論や契約理論の知見が、実際の経済活動にどのように活用できるのかを解説するものです。互いに相手の行動を予測して意思決定を行う環境における最善の戦略について知ることは、ビジネスだけでなく、個人間や国家間の契約や交渉等を理解する際にも役立つでしょう。
【選書理由400字】
今回の震災と津波被害により、多くの方が亡くなられました。また家や仕事を失った人も多く、少なくとも当分の間は、これまでと同じ仕事を続けることが難しい場合もあるでしょう。
このように予想しない形でキャリア転換を迫られるのは災害時だけに限りません。企業の倒産や特定分野からの撤退など様々な状況が考えられます。そこで今回は雇用とキャリア形成を考える際に役立つ6冊を選びました。
まず働くすべての人に求められるのが、人々の行動や市場経済の仕組みについて、また雇用にまつわる基本的なルールについて知っておくことです。加えて現時点で何が起こっているのかだけでなく、今後何が起こるのかを知ることが出来れば有益ですね。もちろん将来を予想するのは難しいことですが、今後の人口分布がどのように変化するのか、それに伴い労働の需給がどのように変わるのかなどは、かなり確実に予測できるのです。
いま自分にできることを確認し、その上でこれから必要なスキルとは何かを考えるきっかけになれば幸いです。
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