2010年10月6日水曜日

反省してみる:その1

前回投稿したのは,2006年に日経の経済教室に掲載された記事です。これは神戸大学法学部(後期)の入試にも使われましたし,おそらく多くの方に読んでもらえたのではないかと妄想しているわけですが,現時点で振り返ると,理解が足りない点などがあるので反省してみようと思います。

全体的には,経済教室への執筆が初めてだったので舞い上がっていたのか(笑),言いたいことを詰め込み過ぎの感があります。そして内容については,もし書き直せるなら以下の5点を是非訂正・修正したいです。

1,まずホワイトカラーエグゼンプションを「一定の条件を満たすホワイトカラー労働者に対して、現行の労働時間規制を免除する制度」と書いているのは誤解を招く表現でした。規制のどの面を緩和してどの面を変えないのかを説明した方が良かったと思います。

2,次に労働組合の団体交渉について言及した際に「一方的に条件が切り下げられるとは限らない」と書いてしまっていますが,低い組合組織率とフリーライドの問題の等に触れておくべきでした。

3,さらに新卒・中途採用の市場における企業間競争が労働条件の維持改善に役立つという主張に関しては,時代や技術革新による環境の変化についても述べておくと分かりやすかったでしょう。例えばインターネットの発達により昔よりも雇用条件比較が容易になり「相場」の形成と認知が改善したのではないかと指摘するなどのことが考えられます。

4,また「労働契約法制に着目すると、解雇を容易にすることも実は労働者保護につながる可能性がある」と書いていますが,舌足らずでした。直後に整理解雇の話と書いていますが,懲戒解雇や普通解雇,また使用者による恣意的な解雇との区別をする必要があります。
現在は,下記のページに転載した昨年の経済教室に書いたように,また最近多くの論者が主張するように,契約の多様化が重要と考えています。そして多様な契約の中には,雇用保障の内容や程度がこれまでとは違う類型も含まれることになります。
http://lab.arish.nihon-u.ac.jp/munetomoando/nikkei090716.html

5,最後に「現在の正社員はこの点から言えば既得権者なのである」という記述も言い過ぎというか表現の選択を間違えています。現時点で書き直せるなら,現在正規雇用の人が非正規や求職中の人,そして若者に対して「努力が足りない」とか「自己責任」とだけ言うのはおかしいですよと述べた上で,労働者を守るとは現時点で正規雇用の人を守ることではないのですと書くでしょう。

以上,反省してみました。

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