2011年8月4日木曜日

問題27

ある市場の需要と供給の関係が描かれた下の図を用いて,生産者に対して以下のような補助金があった場合に発生する死荷重は図のどの部分になるのかを示しなさい。ただしb>1000とします。なおグラフの切片の値なども明記すること。



(1) 1000円の従量補助金(つまり取引量一単位当たり1000円を政府が生産者に対して支払います)

(2) 20%の従価補助金(つまり市場取引価格の20%相当額を政府が生産者に対して支払います)

問題26

ある国のある地域で,バス会社が赤字路線からの撤退を考えているとしましょう。そして,このことを知った住民たちが反対運動を始めました。また自治体の議会においても一部の議員たちが「住民にとって欠かせない交通手段が失われるのは困る」と考えて,今回の件も含めて,今後はこの地域から企業が撤退する場合には自治体の同意を必要とする(ただし倒産した場合にはこの限りではない)旨の条例の制定を検討しているとしましょう。

ここで問題です。このような規制が実施されると長期的に何が起こるでしょうか。仮にあなたがこの議会の議員の一人であったとして,規制に反対の立場から「なぜ望ましくないのか」を他の議員に対して説明することを考えて,その理由を述べなさい。

問題25

ある商品の市場を考えます。この商品は売り手と買い手が一カ所に集まって取引をしています。そしてこの市場は,市場までの移動に交通費がかかる点を除けば完全競争市場の条件が満たされているとしましょう。

話を簡単にするために,まず個々の売り手はこの商品を一人当たり一つまでしか作れない,また個々の買い手も,この商品を買うとしても一つまでとします。そして交通費を考えない場合の需要曲線と供給曲線は次の図のように価格がゼロ以上10000円以下の範囲では直線で表されているとしましょう(需要関数と供給関数はそれぞれq=10000-pとq=pです)。また,家から市場までの往復の交通費は売り手も買い手も全員1000円であるとします。


以下の問に答えなさい。


(1) 交通費を考慮すると,上の図の需要曲線と供給曲線,また市場均衡点はどのように変化するでしょうか。図示しなさい。

(2) このように交通費がかかることにより,この市場の消費者が受け取る余剰は交通費がかからない場合と比較してどの程度減少するでしょうか。数値で答えなさい。



問題24

以下の問に答えなさい。

(1) 安藤さんが所有しているマンションを井上さんが3000万円で購入することになったとしましょう。もちろんお互いに合意の上で契約しました。このとき取引の成立により誰がどのような余剰を得ているのかについて説明しなさい。


(2) 内田さんと江頭さんが,各自が購入して読み終わった本を双方の合意の上で物々交換することにしました。この場合には誰がどのような余剰を得ていますか。説明しなさい。

2011年7月27日水曜日

「労働・雇用」を考える六冊

日経ビジネスアソシエ5/3・5/17合併号「今こそ読むべき本」に寄稿した原稿のオリジナル版を転載します。締め切り直前になって,かなり字数制限が厳しくなったので,雑誌掲載版だけを読んだ方は何が言いたいのかが良く分からなかったかもしれませんが,元々はこのような内容でした。

なおこのオリジナル版はメールマガジンαシノドスvol.76 2011/5/15にも「震災以降の<労働・雇用>を読み解く6冊」として掲載して頂きました。

---ここから---

【必読書3冊200字ずつ】

1, 小島寛之『数学的思考の技術』ベスト新書
人間の様々な行動や選択について、また社会制度について論理的に考えるための良い手助けとなる新書です。例えば、なぜ多くの労働者の賃金が固定給と歩合給・成果給の組み合わせになっているのか、またなぜ年金制度が積立方式ではなく賦課方式になっているのか等の様々な論点について分かりやすく説明しています。第1部と第2部は、家族や友人に自分の言葉で説明できる水準まで理解したことを確認しながら読み進めると良いでしょう。

2, 大竹文雄『競争と公平感』中公新書
私たちは働いて得た賃金で必要な生活用品を購入し、お気に入りのレストランで食事をします。その際に、皆に選ばれなかった店は倒産してしまうかもしれません。このように市場競争には、選択の自由から生まれる消費者のメリットがあるのと同時に、生産者を厳しい競争にさらすことになります。本書は、市場競争のメリットを伝統的な経済学に従って解説するだけでなく、人の弱さや判断ミスをする傾向などにも配慮した形で、市場と政府の役割分担がどうあるべきかを明快に解き明かしています。

3, 大内伸哉『雇用社会の25の疑問 労働法最入門[第2版]』弘文堂
本書は、「女性社員は、夜にキャバクラでアルバイトをしてよいか」や「会社は、美人だけを採用してはダメなのであろうか」といった刺激的なタイトルが付けられた28の話を題材にして、雇用に関するわが国の法的なルールを分かりやすく説明する異色の教科書です。関心がある部分から読み進めると良いでしょう。労働法の基礎的な考え方を知ることは、労働者として自分の身を守るために有益なだけでなく、出世や独立により経営者サイドに立ったときにも役立ちます。

【一押し3冊150字ずつ】

1, 小峰隆夫『人口負荷社会』日経プレミアシリーズ
まず国立社会保障・人口問題研究所のホームページにある「人口ピラミッドの推移」を印刷しましょう。そして人口構成が今後どのように変化するのか、また自分がどの位置にいるのかを確認してから、本書を読み始めましょう。労働市場の需給変化と、それに伴い社会制度がどのように変化するのか、またしないのかを理解することは、私たちが今後のキャリアを考える際に必要不可欠です。

2, 金井壽宏『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP新書
今後のキャリアをどうするつもりかと上司から聞かれても、「将来のことは実際のところ良く分からない」と感じる人も多いかもしれません。そのようなときに役立つのが本書です。ある程度は流れに身を任せつつ、昇進や転職などの人生の節目では将来の方向性についてしっかりと考えるという、具体的かつ誰でも実行可能な方法論が提示されています。

3, ジョン・マクミラン(訳:伊藤秀史・林田修)『経営戦略のゲーム理論』有斐閣
本書は副題に「交渉・契約・入札の戦略分析」とあるように、ゲーム理論や契約理論の知見が、実際の経済活動にどのように活用できるのかを解説するものです。互いに相手の行動を予測して意思決定を行う環境における最善の戦略について知ることは、ビジネスだけでなく、個人間や国家間の契約や交渉等を理解する際にも役立つでしょう。

【選書理由400字】
今回の震災と津波被害により、多くの方が亡くなられました。また家や仕事を失った人も多く、少なくとも当分の間は、これまでと同じ仕事を続けることが難しい場合もあるでしょう。
このように予想しない形でキャリア転換を迫られるのは災害時だけに限りません。企業の倒産や特定分野からの撤退など様々な状況が考えられます。そこで今回は雇用とキャリア形成を考える際に役立つ6冊を選びました。
まず働くすべての人に求められるのが、人々の行動や市場経済の仕組みについて、また雇用にまつわる基本的なルールについて知っておくことです。加えて現時点で何が起こっているのかだけでなく、今後何が起こるのかを知ることが出来れば有益ですね。もちろん将来を予想するのは難しいことですが、今後の人口分布がどのように変化するのか、それに伴い労働の需給がどのように変わるのかなどは、かなり確実に予測できるのです。
いま自分にできることを確認し、その上でこれから必要なスキルとは何かを考えるきっかけになれば幸いです。

2011年6月2日木曜日

分譲マンションの議決権について

1,はじめに

私は賃貸マンションに住んでいますが,最近,周囲で家を買う人が増えてきたようです。そこで少し気になって,新聞に折り込まれているチラシなどを見るようになりました。まあ私には家を買うお金はまだないのですが(笑)

さて,いろいろ調べているうちに気になったのが分譲マンションの議決権の決まり方です。

マンションの区分所有者が持つ議決権については,区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S37/S37HO069.htmlの第三十八条により,規約に別に定めない限りは,専有部分の床面積の割合に応じて設定されています。そして実際に多くの物件ではこの通りに,面積に比例して議決権が設定されているようですが,これが本当に居住者の望むところなのかについて疑問を持ちました。

少し考えてみると,面積比例の議決権というのは平等でもなく効率的でもないように感じます。まずはいくつかの例を考えてみましょう。

例えば,1フロアに一戸しかない,また完全に同じ間取りの5階建てのマンションがあったとしましょう。販売価格は,上層階に行くほど高いのが普通ですね。上の階の方が眺望が良いなどの利益がありますから。しかし現行のルールでは,販売価格や物件の価値は違っても,このマンションの5戸は面積が同じなので議決権は均等です。

別の例を考えてみます。ある大規模マンションの低層階にある100m^2の部屋と高層階にある80m^2の部屋があったとします。ここで仮に当初の販売価格で比べたら,高層階の部屋の方が高かったとしましょう。しかし高層階の部屋は,買値が高かったのにも関わらず,低層階の100m^2の部屋よりも議決権が少ないのです。

これと同様に,同じフロアにある100m^2の北向きの部屋よりも80m^2の南向きの方が購入価格は高いのに,議決権が少ないこともあり得ますね。

これらの例を見ると,何かおかしいように感じませんか。極端な例を考えると,問題点がより明確になります。例えば,同じマンションの部屋に対して同じ5000万円を出資したのに,高層階の80m^2の部屋を所有する人の方が低層階の100m^2を所有する人よりも議決権が少ないのです。これは不公平ではないでしょうか。

2,対案

そもそもマンションとは何でしょうか。これを価値の異なる物件を持ち寄って財産を形成している共有の不動産と考えるなら,資産価値に応じた議決権になるのが自然ではないかと思うのです。そこで検討したいのは,面積比例ではなく資産価値比例で議決権を設定するという考え方です。

それでは議決権を資産価値比例にするとはどのようなことでしょうか。マンションの資産価値は,時間を通じて変わってしまいますが,ここでは分譲時に設定した当初の価格の比で議決権を設定するケースを考えます。例えば最初に例として挙げた,完全に同じ間取りの5階建てのマンションを考えたとして,当初の価格が5階は4000万円,4階が3900万円,3階が3800万円といったように100万円ずつの差があったとしましょう。もちろん交渉により値引き販売や,売れ残り物件の値下げ等もあるかもしれませんが,ここではこれらの当初販売価格に比例した形で議決権を設定することを考えます。

3,何が変わるのか?

現状のように面積比例で議決権を設定する場合は,単位面積当たりの価値が低い部屋(例えば低層階や北向き等)に対して過大な議決権が設定されているのに対して,価値が高い部屋(例えば高層階や南向き等)の所有者に対しては,本来の価値と比べると議決権が過少になっているように思われます。

これに対してマンションの議決権を,これまでの面積比例から価値比例に変更すると何が起こるでしょうか。まず,これまで購入金額の割に権利が少なかった高層階の高額物件の価値がおそらく上昇するでしょう。もちろんそれに伴い価格も上昇するでしょうが,物件購入者にとっては資産価値に応じた権利を得られることになります。一方でこれまで過剰な権利が与えられていた低層階物件については,議決権は減りますが,物件の価格も下がるでしょう。このほうが購入者にとって幸せなことではないでしょうか。

4,おわりに

そもそも民法の第二百五十二条では「共有物の管理に関する事項は,前条の場合を除き,各共有者の持分の価格に従い,その過半数で決する。ただし,保存行為は,各共有者がすることができる」とされています。マンションは区分所有者の共有物であり,この法律の考え方を素直に適用すれば価格比例の方が自然だと考えます。

マンションの議決権については,面積で議決権が決まるということがこれまで当然だったために誰も疑問に思わなかったのかもしれません。または,疑問に思っていたとしても,面積比例が常識だから争ってもしょうがないと考えて主張しなかっただけかもしれません。

しかし,これまで不満がなかったのかについては調査する必要があるように思います。高層階の部屋を購入する人は,議決権が少ないことに対しいて,また低層階を購入する人は望むよりも多い議決権が設定されているために価格が高止まりしていることに対して,もしかしたら不満に思っていたのではないでしょうか。

もちろん当初分譲価格比例で議決権を設定するよりも,これまで通りの単純面積比例の方が明確で望ましいという考え方もあるでしょうし,また別の権利配分ルールの方が望ましいという意見もあるかもしれません。

議決権の設定は,どのようにするのが望ましいのでしょうか?もし良い案があれば是非ご教授ください。よろしくお願いします。

2011年4月2日土曜日

大事なのは電気料金の値上げではなく、傾きを変えることです

現在、関東地方では計画停電が実施されています。これは電力供給量の上限を需要量が超えそうな場合に、一部地域を停電させることで、大規模停電を防ぐための取り組みです。しかし、この取り組みには、病院や生産性の高い工場なども一律に停電させてしまうため、効率性の観点からは問題があります。

そこで多くの経済学者が「価格メカニズム」を用いて需要量の抑制を図ろうと提案しているわけです。その際に「電気料金の値上げが必要」とか「電気の使用に対して高い従量税を課せ」といった形の提案をするのですが、これに対して「現在でも困っている人がいるのに値上げするとは何事だ!」といったような批判もあるようです。

しかしそれは誤解かもしれません。

もちろん経済学者の提案が説明不足であることは否定できないでしょう。しかし、例えば「電気料金の値上げが必要」というのは、一般家庭の支払う電気料金の総額を増やせということを必ずしも意味しません。このような提案の趣旨は、従量料金の傾きを急にしようということです。そして、傾きを急にすることが必ずしも家計の圧迫につながるとは限らないのです。以下では簡潔に説明しましょう。

ある一般的な家庭を考えてみます。ここで仮に電気料金が無料だったとしたら、この家庭はどうするでしょうか。おそらく電気を無駄遣いするでしょう。電気もエアコンもつけっぱなしになるかもしれません。

ここで注目して頂きたいのは、この家庭が電気を使うことから得られる満足度についてです。おそらく電気を使う量が倍になれば満足度も倍になるといったような単純な関係は成立していないでしょう。それは最小限の電灯や冷蔵庫のために電気を使うことのメリットが非常に大きいのに対して、使用量が増えれば増えるほど追加的な満足度の増加分が減るからです。

この関係を、一月の電気の使用量を横軸に、また電気を利用することから受ける満足度(を金銭に換算したもの)を縦軸に描くと次のような関係になるでしょう。実際にはこのような奇麗な形をしているかどうか分かりませんが、重要なのは「電気を使う量が増えれば満足度は増えるが、その増え方は減っていく」という点です。


次に電気料金について考えてみます。本当は契約アンペア数により固定部分も変わりますし従量部分は3段階に分かれているためもっと複雑ですが、ここでは単純化のために次の図のように固定部分と従量部分に分かれているものとします。また深夜電力の割引などは考えず、最も一般的な従量電灯契約を考えます。


それではこの家族がこの図のような料金体系に直面したら、どのくらいの電気を使うでしょうか。答えは次の図のAまで使うというものです。なぜなら電気から得られる満足度から支払金額を引いた結果的な満足度(=矢印の幅)が最大になるのがこの使用量だからです。


ここで電力供給量の制約から、この家庭の電気使用量をBまで減らして欲しいとしたら、電気料金をどのように変化させれば良いのでしょうか。最も簡単なのは、この家庭がちょうどBだけ使用したときに満足度が最大になるように、従量部分の傾きを急にすることです。これは次の図で示されています。


このとき使う電気の量はAからBへと減っているのに、支払う電気料金は増えています。これではお客さんは不満に思うでしょう。

しかしこの家庭に対して、電気使用量としてBを選ばせる手段はこれだけではありません。例えば携帯電話料金などで見られるような、一定の使用量までは定額部分に含まれているといった契約を考えてみましょう。そしてCまでの使用量は定額部分に含まれていて、Cを超える部分に対しては先ほどの図と同じ傾きの従量料金が加算されるとします。このとき次の図のようになります。


このような料金設定の下でも、電気使用量としてはやはりBが選ばれますね。ここから分かるのは、この家庭の使用量を特定の値に誘導したいときに重要なのは、支払う電気料金の総額ではなく、従量料金部分の「傾き」であるという性質です。あとは固定料金の金額とそれに含まれる使用量Cを適切に選ぶことで、この家庭の電気料金支払額を変化させることが可能なのです。

この性質を使って電気料金を設計すれば「節電しているのに値上げされるなんて許せん!」といった批判を浴びることなく、節電を奨励することが可能になります。おそらく昨年と同様に電気を使うと値上げになるが、節電したら値下げになるくらいに料金設定することが最も理解を得られるのではないでしょうか。実際に下の図ではそうなっていますね。


もちろん各家庭ごとに電気を使うことから得られる満足度は異なりますし、電気料金として支払える金額も違います。よってすべての家庭に対して同じ料金プランを提示したとしても、各家庭ごとに選ばれる利用量は異なるでしょう。そこで、実際には平均的な家庭向けに価格体系を決めることになるでしょう。

多くの経済学者の提言は、スマートメーターの設置などによりピーク時のみ価格を上げること(いわゆるピークロードプライシング)が不可能であることを前提とするなら、従量部分の傾きを急にしようということです。ここで説明したように、だからといって一般家庭の毎月の電気料金が増えるとは限りません。ご理解頂けたでしょうか。

なお私がTwitter上で書いた関連するコメントがTogetterにまとめられていますので、こちらも参考にしてください。まとめて頂いた @marianna_ave さん、ありがとうございました。